AGT column
Tell me more about AGT
№02
専用軌道システムとしてのAGTの特徴とは
2022/5/20
ひとつ前のコラム「都市部の公共交通におけるAGT の役割」で、AGTが属す
る「専用軌道システム」がバスや路面電車などの「非専用軌道システム」に
比べ、安全性、定時性、速達性で次元の違う優れた性能を有していることを
ご説明しました。
「専用軌道システム」におけるAGTの特徴として、6%という急勾配に対応
できることなどがよくあげられますが、鉄道でも強力なモータを装備するこ
とで6%勾配に対応できるようにした電車は存在します。
強力なモータに要する費用が、それによって得られるメリットとバランスし
ていれば、それも有りなのでしょう。
AGT以外のシステムではどうしても実現できない「AGTだけの特徴は何か」というと、それは、半径 30m の小さなカーブが曲がれるということになります。
新橋駅と浜松町駅の少し手前まで、東海道新幹線とゆりかもめが並走する区
間があります。
ゆりかもめの軌道は、新橋を出ると汐留で90度曲がり、新幹線と並走したあ
と、また90度曲がり海側に進んでまた90度曲がるというクランク状の軌道が高層ビルの間をぬって敷設されています。
浜松町駅と田町駅間では、東海道新幹線は東京モノレールとも並走します。
東京モノレールも、新幹線と並走したあと、90度方向を変え、海側に姿を
消します。
新幹線は大都市間交通の代表的存在で、路線はあくまでもまっすぐが基本で
す。
都市内交通のAGTやモノレールは、道路上で90度に方向を変えることができるのが特徴です。
同じ都市内交通である地下鉄は、直接、目でルートを見ることはできませんが、ルート図を見ますと、多くは主要道路の下を通り、随所に90度の方向転換箇所が見られます。
地下鉄と異なり、AGTやモノレールなどの高架の都市内交通システムは、
交差点で付近の建物に影響を与えずに90度曲がることが要求されます。
そのためAGTは、最小曲率30mRで曲がれるようになっています。
鉄道の車両長は18m前後ありますが、AGTの車両長は8m前後と鉄道の2分の1より短くできています。AGTの車両長は、なぜこんなに短いのかと言いますと、最小回転半径30mで道路の交差点上を曲がれるようにするためなのです。
既存の道路の上に鉄道の高架軌道を設けようとすると、交差点で方向を変えるには交差点周辺の建物を撤去する必要が生じます。
そのため、都市内に新たに鉄道を敷こうとすると、地下鉄にせざるを得なくなります。
輸送量がそれほどでもない場合は、地下鉄の代わりにLRTということも考えられますが、軌道を設置した分、道路の車線が減るので、自動車の交通量が少なくなってしまうというしわ寄せがきます。
AGTは、道路の車線を減らさずに、既存の道路の上方のスペースを有効に使い、交差点周辺の建物に影響を与えずに高架軌道を敷設できるシステムとして開発されたものです。
地下鉄の銀座線は車両長16mで最小曲線半径は94m、丸の内線は車両長18mで最小曲線半径は140mです。
鉄道の場合、小さなカーブを通過するときに発生する軋り音が酷く、沿線周辺に騒音問題を生じさせますので、地下鉄以外でこのような小さなカーブが使われることは、普通はありません。
そのため、鉄道の新線を計画する際の最小曲線半径は400mまでとし、やむを得ない箇所について200mとしています。
このことからも、AGTの最小回転半径30mがいかに特徴的な数値であるかお判りいただけると思います。
ポートライナーの三宮駅を出たところや日暮里・舎人ライナーの日暮里駅を出たところに最小回転半径30mのカーブがあり、道路上で90度方向を変えています。
モノレールの車両長は、15m前後ありますので、最小回転半径は50m以上となり、道路の交差点上で、周りの建物に影響を与えずに90度曲がることは困難です。
東京モノレールは、田町駅付近の港区スポーツセンター横で90度方向転換していますが、路線が敷地に食い込んでいるのを見ることができます。
AGTの車両長が短いのは、AGTが高架の都市内交通システムとして、交差点周辺の建物に影響を与えずに90度曲がれるという重要な機能のためなのです。
最小回転半径30mこそ、鉄道にもモノレールにもないAGTの特徴と言えます。