AGT column
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№09
AGTの軌道と道路の関係
2023/11/22
1.日本のAGTのルーツ
都会の道路の上方の空間を使って、地下鉄よりも少ないコストで高架専用軌道を建設するというコンセプトで開発されたのが日本のAGTです。
フランスのAGTは、地方都市の地下鉄を、トンネル径を小さくすることにより低コストで建設することをコンセプトとして開発され、レンヌ、トゥールーズ、リヨンの3都市に6路線の地下鉄が建設されています。
日本のAGT路線は、大きく分けて2種類の形態に分けることができます。
一つは、ポートライナー、六甲ライナー、ニュートラム、シーサイドライン、ゆりかもめ、ピーチライナーのような人工島や埋め立て地、そしてニュータウンなどと主要鉄道駅を結ぶ軌道系交通、もう一つは、酷い渋滞を引き起こしているバス路線を軌道系交通によって通勤通学の定時性、速達性を確保するための路線で、アストラムライン、日暮里・舎人ライナーがそれにあたります。
渋滞解消を目的とした路線は、渋滞を引き起こしている道路の中央分離帯に支柱を立ててその上に軌道が載っていますが、人工島や埋め立て地の路線は、道路だけでなく、公園や広場など総合的な都市計画に基づきルートが計画されているのが特長です。
2.実路線のパターン化とその割合
日本では廃線になったピーチライナーを含めて全部で11のAGT路線が建設されましたが、1985年開業の西武山口線は西武の遊園地、ゴルフコースに沿った路線であること、1983年開業のニューシャトルは新幹線と軌道構造を共有している点などからこの2路線は除外し、今回の検討の対象路線は全部で9路線としています。
軌道位置をパターン化すると、
1.自動車道の中央分離帯に柱を立て、その上に軌道を設置したもの
2.自動車道の片方の歩道の外側に柱を立て、その上に軌道を設置したもの
3.護岸工事がなされた川沿い、海岸沿いに柱を立て、その上に軌道を設置したもの
4.団地内、公園内、広場内に柱を立て、その上に軌道を設置したもの
5.専用の高架橋をもつもの
以上5パターンで駅間軌道数を数え比較した結果を表1に示します。
対象9路線の全駅間数は99あります。そのうち中央分離帯に柱を立てて軌道を配置する(アストラムは3区間が地下)日本のAGTのコンセプトに沿った軌道は61あり、62%を占めます。その次に多いのが歩道脇に柱を立てて軌道を設置する方法で22%を占め、合計で84%が道路沿いに建設されていることがわかります。
3.渋滞解消を目的とした路線
2008年に開業した日本で最も新しいAGTである日暮里・舎人ライナーは、前述したAGTのコンセプト通りに、尾久橋通りの中央分離帯の上に柱を立ててその上に13駅、9.7㎞の高架軌道が敷かれています。荒川を渡る区間だけ、専用の橋を建設したので尾久橋通りからそれますが、それ以外はコンセプト通りです。
1994年に開業した広島のアストラムラインも、起点の本通駅から中筋駅までの10駅、7kmが祇園新道に沿って建設され、そのうち4駅が半地下を含む地下鉄、6駅が中央分離帯に柱を立ててその上に高架軌道を設置しています。 祇園新道を外れてからも、県道38号線上の上に高架軌道が置かれ、コンセプト通りの構造が続きます。
日暮里・舎人ライナーの尾久橋通りとアストラムラインの祇園新道は、長い間、朝晩の渋滞が激しく、バス便の定時性が問題となっていました。 AGTの開通により、酷い渋滞が解消され、通勤通学者にも定時性が確保されました。
4.人工島、埋め立て地の路線
1981年、日本初のAGT、ポートライナーは、三宮沖に建設された海上都市ポートアイランドの主幹交通として当初から計画に織り込まれていた路線です。
陸側の三宮駅と貿易センタービル間は国道2号線の中央分離帯の上に柱を立てた高架軌道ですが、ポートアイランド内は幹線道路沿いに緑地帯、自動車道、AGT高架軌道を横に並べた余裕のあるレイアウトにしています。
ニュートラムは、全9駅間のうち6駅間が自動車道路の中央分離帯に柱を立てた高架としています。コスモスクエア駅側の2駅分が歩道の外側で、ポートタウン西駅と東駅間が団地内を横切るルートとなっています。
1991年に開業し、2005年に廃線となった桃花台線も、約7割が中央分離帯上の高架軌道ですが、団地側の約3割の区間が歩道沿いの高架となっています。
1995年開業のゆりかもめの埋め立て地側は、中央分離帯上に高架軌道を設け、合理性を優先したレイアウトになっています。
5.道路と縁の薄い軌道
六甲アイランドの六甲ライナーの軌道は、起点の住吉駅から南魚崎駅間は、魚住川の川岸に柱を立てた高架軌道、島内は、細長い広場の中心に柱をたてて高架軌道と高架駅を建設し、道路と関連性の薄い路線が特徴的です。
横浜シーサイドラインは、道路沿い軌道の8駅間に対し、金沢八景側の5駅が海岸沿い2駅間、公園内3駅間と海との親和性の高い路線となっています。
6.まとめ
9路線のAGTの路線と道路の関係を見てきましたが、六甲ライナーを除き、基本的に日本のAGTは道路に沿って路線が計画されています。
ポートライナーは、2006年に神戸空港までの延伸が行われ、ゆりかもめも2006年に豊洲まで延伸されました。 このように、道路がある限りAGT路線は延伸が可能なシステムです。